RPG MAKER UNITEが電撃発表され、業界を賑わしています。RPG MAKER UNITEは、Unityのアセットとして提供されます。現在はSteamで販売ページが公開されていますが、Unity Asset Storeでも販売予定のようです。ツクールの名を捨て去って、海外タイトルと同じくMAKERで共通しているのは、Unity Asset Storeだと日本語タイトルが付けられないからかなと疑っています。
さて、RPGツクール製ゲームが圧巻している現在のエロ同人ゲームにおいて、RPG MAKER UNITEの影響は避けられません。では、どう変化するのか、いくつか予想をしたいと思います。なお、現時点でRPG MAKER UNITEの情報は全くと言ってもいいほど出ていないため、ほとんど妄想です。
Unityでゲームを作るのに本当にノンコードでいけるか?
まず、前提条件として、RPG MAKER UNITEはエディタで入力するだけでRPGが作れるテンプレートアセットと呼ばれるジャンルのアセットになるかと思います。
Unityにはエディタ拡張と呼ばれる機能があり、この機能を使うと理論上、UNITYエディタの上に好きなエディタを作ることができます。それこそ既存のRPGツクールのエディタそっくり、且つ機能もそっくりに移植することは可能です。ランタイムスクリプトはそのデータを適宜読みつつゲームを実行します。そのため、既存のRPGツクールの感覚で触ることは可能です。
現にUnity Asset Storeの中には、コードを一切書くことなくゲームを作れるアセットが普通に並んでいます。むしろ最初からそのアセットを使ってUnityを覚えれば簡単なのに、Unityを覚える場合はコードを書いて覚えるチュートリアルばかりなのは現在のUnityの敷居を高めている要因の一つかもしれません。
では、本当に簡単なのかと言われれば、実は覚えなければいけないことはいくつかあります。Unityエディタそのものは慣れれば分かりやすいのですが、初心者に直感的かと言えばツクールと比較すると慣れがかなり必要であることは否めません。まずはUnityのインストールやアセットのインストール方法、画像や音楽などアセットをUnityに取り込む方法は必須です。また、RPG MAKER UNITEの作りにもよりますが、レイヤー、タグの概念は覚える必要があるかもしれません。また、実行形式に変換する方法も最初は戸惑うかもしれません。
つまり環境設定の面では少々いままでよりは面倒と言えるでしょう。ただし、エディタ画面を見るかぎり、環境さえ整えれば実際の作業難易度はツクールと変わらないと思います。
むしろ心配なのはRPGツクールMV / MZで言うコアスクリプトをいじる作業。RPGツクールは恒例でスクリプトの説明書を端折る伝統があり、勝手にスクリプト読んで把握しろと丸投げしてきます。今回、おそらくコードは大幅な変更を伴うと思うため、RPG MAKER UNITEそのものの拡張や他アセットとの連携を考えている場合はちょい面倒かなと思っています。
ツクラー側から見た利点
景観が豊かになる
まず、マップについて。以下、紹介文から引用。
進化したマップエディタ
今作では、従来どおりタイルを組み合わせてマップを作り上げることはもちろん、大きな1枚の背景上にオブジェクトを配置する形式でマップを制作することも可能になりました。
https://store.steampowered.com/app/1650950/RPG_Maker_Unite/
Unityでは、大きな1枚のピクチャの上に様々なオブジェクトを載せることができます。また、それと合わせる形でタイルセットが利用可能です。1枚絵の上に様々なオブジェクトを自由に載せ、且つタイルセットでも配置ができるということです。Steamの画像から見てみます。
まず、大雑把にフォトショで原型を作成します。この画像の場合、道と草、そして家や崖はフォトショで作成しているのかと。その上に木オブジェクトをUnity上で配置しています。まず、左の赤枠線。沢山の木の後ろにさらに木が隠れて…というのをずらーーっと連なっています。ツクールでは重なるオブジェクトの制限があったはずですが、Unityにそのような制限はないため、オブジェクトの木を連続で貼っていることが分かります。
次に下の赤線。共通の木を置いていますが、タイルのようなマス目区画の位置ではなく、ばらばらの位置に配置しています。タイル区画のみでは表現しにくかった自然体を表現できています。
その上にタイルをつけることも可能で、次の画像ではタイルの木や家を配置しているようです。
ただ、画像を見る限り、Unityのタイルマップではなく、独自のタイルマップを使っているようです。このあたりでUnity本体との差異はどうなるか気になります。
ちなみにこの画像、見た目的にUnity標準画面に近いですが、独自エディタのようです。また、セーブボタンがあるため、Unity標準のような入力側反映ではなく、セーブボタンを押すことで記録するようなエディタになっているようです。
独自ウィンドゥのUIが当たり前になる
UnityはUIを作る時に、通称uGUIと呼ばれる機能を利用します。将来的には次世代UIのUI Toolkitも選択肢もありますが、現在はまだ発展途上なので扱いません。シーンビューを使って視覚的にデザイナーでも簡単にUIの外観を組むことができます。
おそらくRPG MAKER UNITEのUIもuGUIを拡張して作られるでしょう。
外観と機能を結び付けるコードが本来は必要です。ただ、アセットを販売する時、アセットの機能とUIの機能を繋ぐためのコンポーネントなりAPIを用意する場合が多いです。そのため、自分で好きなように作ったuGuiのUIにRPG MAKER UNITE側が用意したコンポーネントをセットするだけで、独自ウィンドゥが簡単に作れるようになるのではと思っています。
逆にそんな機能がなかったら、がっかりします。
派手でUnityに最適化したパーティクル、シェーダー、ポストエフェクト
おそらくUnityに移植する最大のメリットがエフェクト関係の強化です。Unityエンジンに最適化した各種パーティクルエフェクト、ドット絵の揺らぎや色の変化などを簡単に作るシェーダーが使い放題になります。
また、ツクールではプラグインを使ってCPU負荷をかけて実現していた光源の処理もGPU処理で高速に可能です。2Dシェーダーもアセットストアに便利なものがあるので、わざわざ勉強して無理に作らなくても簡単に利用できます。パーティクルエフェクト作りも独自のエディタで簡単とは言わないけど視覚的に開発ができ、手頃に作ることができます。これらはツクールと比べて遥かに処理速度が軽い点が特徴です。そのため、ツクールの時よりも大規模なエフェクトも可能です。
例えば、今までのツクールだとこのようなドットキャラの変化は難しかったですが、Unityとの融合により簡単になる可能性があります。ちなみに、このAll In 1 Sprite Shaderは2Dシェーダーアセットの中でもかなり優秀なシェーダーだと思っています。
Unityユーザーから見た利点
RPGツクール + メインジャンルなゲームが多数出てくる
Unityはシーンという単位で区切られて開発できるのですが、シーンごとで全くの別物ゲームを作り、別のシーンから呼ぶことができます。
つまり、基本はRPG MAKER UNITEだけど、ある条件で別ゲームになるような開発が可能です。例を挙げた方がはやいかな。
- 基本はツクールだけど、戦闘シーンのみ2D格闘ゲームになる
- 町はツクールだけど、フィールド・ダンジョンは横スクロールアクションゲームになる
- 町はツクールでミッションクリア型ゲーム。ミッションはタワーディフェンスになる。
- 基本は横スクロールアクションだけど、敵と接触するとツクールの戦闘画面になる
RPGツクールMV / MZでも強引に可能と言えば可能でしたが、ツクールとは全く関係ない1からのスクリプトで開発できるため、より本格的になるはずです。
メトロイドヴァニアやシミュレーションRPGが増える
Unity使いとして、このアセットで嬉しい点は、日本語で入力できるRPGエディタが入手できることです。私はRPGを作るというより、この方面で購入を検討しています。
アセットの基本構造として、エディタで入力した値は普通、ScriptableObjectと呼ばれるデータコンテナに格納されます。ランタイム側でこのデータコンテナを読み込むことで効率よく静的データを利用できます。今までのツクールでいうJSONファイルとほぼ同等です。
つまり、このデータコンテナを読み込めば、エディタで入力した値は簡単に取得可能で、RPG MAKER UNITEのランタイム(コアスクリプト)を使わずとも独自に利用することが可能です。
これまで、RPG系のエディタアセットがなかったとは言いませんが、日本語で入力できるエディタアセットは初です。データベースを作る作業は想像する以上に膨大で、特にエディタ拡張が非常に面倒くさいため、そのあたりを大幅に短縮できる可能性を持っています。
今までは、ツクール側の規約でツクールのデータをUnityで使うのが微妙でした。が、Unity Asset Storeのアセットについては、以下のように認められています。
Q06: アセットを改変したり合体させても良いですか?
A: はい、自由に改変したり合体させることができます。
https://assetstore.info/assetstore_jp_faq_01/#Q08
メトロイドヴァニアやシミュレーションRPGの他に、RPG MAKER UNITEを使った3D-RPGも出てきそうです。案外こちらはコアスクリプトも流用して作業を大幅に短縮できそうな気もします。
RPG MAKER UNITEのプラグインはどうなるのか
エンジンのプログラム言語がJavaScriptからc#に変更になるため、簡単にコアスクリプトの拡張ができなくなります。具体的には機能追加はある程度可能だけど、機能修正と競合対策がほぼ不可能になります。
そのため、どうなるかですが、おそらく限られたプラグイン作者が大規模な変更プラグインを有償販売する例が出てくるのかなと。
例えば戦闘拡張プラグインが2種類販売された場合、ユーザーはそのうちの1つだけしか利用できない可能性が高いです。そのため、それ一つで戦闘の全てがまかなえる大規模なものになるでしょう。作者的にも負担が高いのでフリーでの配布は減るのではと思います。Unity Asset Storeは有償販売が活発なので、それも後押しの一因になりそうです。
他、本作を機にプログラムができないUnity使いが大増加します。そのため、直近として需要がありそうなのは、アセットのハブです。既存に有名なテンプレートアセットがあります。例えば横スクロールアクションを作るCorgi Engine、格闘ゲームを作るUFE 2など。また、UIを視覚ベースで作るDoozy UI Managerなどシステム系でもコーディングすることなく便利なアセットが複数あります。
これらノンコードで利用できるUnityアセットをRPG MAKER UNITEに対応できるハブは間違いなく需要がでてくると思います。
まとめ
以上、いくつかRPG MAKER UNITEの予想をしてみました。Unity使いである私個人としては、後者の日本語データベースという観点から、かなり期待しているツールです。また、機能を追加していけば便利なトップダウン2Dの ビジュアルスクリプティング としても期待しています。どうかエディタ部分のコードをユーザーから見えないような措置にしないことを祈っておきます。